研究室・教員紹介

コンクリート材料施工学・保全工学

研究室の概要

コンクリート構造物の高品質化・生産性向上に向けた材料・施工性能評価と歴史的構造物の保全に関する研究

 道路などの社会インフラや建築物には,多くのコンクリート構造物が使われ,私たちの生活を支えていますが,老朽化が進んでいる構造物も少なくなく,コンクリート構造物をいかに保全していくかが問われています。また,新設や更新されるコンクリート構造物には,更なる高性能化,長寿命化,省力・省資源化が望まれています。

 コンクリート構造物が設計・施工され,維持管理されながら使用されていく各段階に対して,「性能評価」,「品質向上」,「長寿命化」,「生産性向上」などをキーワードとして研究を行っています。また,長崎には軍艦島や原爆遺跡などの歴史的構造物として評価されるコンクリート構造物が多くあり,その保存活用に向けた研究にも取り組んでいます。

 研究の主対象分野であるコンクリートは,材料,施工,構造,維持管理が密接に連係し,さらには社会情勢の影響を大きく受ける分野でもあります。さらには,材料や供用時の環境には地域性もあり,当然のことながら解決すべき課題にも地域性,多様性があります。そのような中で,以下の3つの視点からの研究に取り組んでいきたいと考えています。

①スケールオーダーの異なる“構造”をマルチスケール的に捉えた研究

②材料-施工-構造-維持管理の連係を一気通貫に捉えた研究

③地域的な課題の解決について取り組んでいくとともに,グローバルに意義のある研究

 ①については,nmオーダーの水和物集合体による骨格構造や空隙構造の挙動がmオーダーの部材の特性に影響を及ぼしている事例が報告されることが増えてきており,マクロな構造挙動や材料物性を評価,制御するためには,一段階小さいオーダーにおける振る舞いを精緻に追っていく重要性が増してきています。

 ②については,材料,施工,構造のいずれが欠けても良質なコンクリート構造物は成立しえません。さらには,維持管理においては材料,施工,構造それぞれからの視点からではなく,それらを総動員して総合的に対処する必要があります。

 ③については,長崎におけるコンクリート構造物に関わる地域的課題としては,良質な骨材の枯渇化への対応,塩害やASR等の劣化に対する対応,軍艦島や原爆遺跡等の歴史的価値を有するコンクリート構造物の保存技術の確立等があります。いずれの課題も長崎だけが抱えている課題ではなく,国内各地さらには世界的にも課題になっている事項でもあります。特に軍艦島の保全については喫緊の課題であり,さらには供用不可の状態まで劣化損傷したものを多くの制約条件を考慮して対応するためには,既存の考え方や技術をそのまま適用できず,既存技術の改良や新規技術開発が必要であり,そこでの知見は一般のコンクリート構造物の保全工法の性能向上にとっても有効であると考えられます。

 そのような中で,現在取り組んでいる代表的な研究5つの概要を以下で説明します。

高炉セメントにフライアッシュ混合したコンクリートの材料・施工性能評価

 コンクリート構造物の長寿命化,環境負荷低減,産業副産物の有効利用,地域産材料の有効活用等の観点から,フライアッシュや砕砂の活用に向けた取組みが進められています。しかしながら,利用実績のない,少ない材料をコンクリートに使用していくためには,材料・配合設計手法を確立するとともに,施工性能や硬化特性(強度,収縮,耐久性等)を明確にすることが求められます。本研究では,高炉セメントにフライアッシュ混合したコンクリートの温度ひび割れ抑制効果や耐久性向上効果を評価するとともに,細骨材として砕砂を用いた場合の施工性能評価に取り組んでいます。

プレキャストコンクリート(蒸気養生コンクリート)の材料性能評価

 i-Constructionのトップランナー施策の一つである“コンクリート工の生産性向上”において,プレキャストコンクリートの利用拡大が推し進められています。プレキャストコンクリートの製造においては,早期強度の発現を促進するために蒸気養生が行われることが多くありますが,性能設計に必要な物性値に及ぼす蒸気養生の影響は十分に明らかになっていません。本研究では,蒸気養生コンクリートの各種物性値に及ぼす蒸気養生パターンの影響を体系的に解明するとともに,低収縮・高耐久蒸気養生コンクリートの開発を目指しています。

コンクリートの空隙構造連続性の定量評価と物質移動予測の高精度度化への応用

 コンクリートの劣化に対する抵抗性を支配する空隙構造のうち,連続性は重要であるにも関わらず定量的に評価されていない現状にあります。本研究では,空隙構造の連続性に及ぼす材料,配合,養生の影響を明らかにし,空隙構造の連続性に着目したコンクリートの材料性能評価手法の構築を目指しています。

コンクリート構造物の塩害環境評価と耐久性設計・維持管理への活用

 劣化予測には材料そのものの劣化に対する抵抗性とともに,境界条件となる劣化環境の設定が重要ですが,劣化環境の高精度で合理的な設定にはほど遠い状況にあります。本研究では,長崎県沿岸のコンクリート構造物を対象に塩害環境を定量評価し,方位・標高,気象・海象,周辺地形等が及ぼす影響を明らかにするとともに,耐久性設計・維持管理に組み入れる手法について検討しています。

歴史的コンクリート構造物の現状評価と保全工法に関する研究

 歴史的,文化的価値を有する構造物の保全のためには,現状を的確に把握するとともに,変状の発生・進行メカニズムを解明し,実効性の高い保全工法の確立が求められています。本研究では,軍艦島に現存する護岸構造物,生産施設,居住施設などの歴史的構造物を文化財,世界遺産として保存活用していくために,現状の材料的・構造的健全性の評価に取り組むとともに,補修・補強材料の性能評価,オーセンティシティ―確保と保全効果の両立を目指した補修・補強工法の検討を行っています。

ゼミについて

 室内実験,現地計測,実構造物調査を中心に研究を進めています。今後はそれらに加えて,解析的手法も組み込んで研究に取り組んでいきたいと考えています。研究室に配属された学生は,1人1テーマを担当しますが,実験,現地計測・調査に当たっては,研究室全体で取り組みます。多方面の基礎知識を身に付けるとともに,プロジェクト遂行能力の養成についても力を入れていきたいと考えています。

 研究業績等は,下記のresearchmapをご覧ください。

https://researchmap.jp/concrete_kenjisasaki

 

准教授
佐々木謙二 Kenji Sasaki

メッセージ

コンクリートは、社会を支える重要な資材です。
安価で調達しやすく、使い方も容易で、いまだ他に代わるものがない優れた資材、コンクリート。
実は、なぜ、丈夫で長持ちなのかなど、本質的なことはわかっていません。
いまミクロの世界で解明が進められ、より優れたコンクリートの開発が期待されています。

詳しいプロフィール
おすすめの書籍など
  • 図解橋の科学 なぜその形なのか?どう架けるのか?
    土木学会関西支部編/田中輝彦・渡邊英一他著/講談社ブルーバックス/2010
  • コンクリートなんでも小事典 固まるしくみから,強さの秘密まで
    土木学会関西支部編/井上晋他著/講談社ブルーバックス/2008
  • 世界がわかる理系の名著
    鎌田浩毅著/文春新書/2009
  • 研究室・教員紹介

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