研究室の概要
本研究室では、航空機・飛翔体などの軽量構造の設計解析や、生物のように柔軟な構造の積極的な利用を目指した研究を行っています。そのために、構造力学・振動工学を基礎として、流体力学・飛行力学・制御工学など、複数の分野を融合した設計解析技術を開発し、「ものづくり」に応用していきます。本研究室では、研究を通して、様々な分野の幅広い知識と経験を学んでいきます。
講義「航空宇宙工学概論」の紹介動画
羽ばたき型ドローンの開発
本研究室では、羽ばたき型ドローンの研究開発を進めています。生物の羽ばたき飛行を模擬した羽ばたき型ドローンは、従来の回転翼型ドローンよりも安全かつ静音で、人間や自然との親和性の高いドローンと言え、住宅・学校・オフィス・商業施設・工場などで、人々の身近な空間を飛行できる都市型のドローンとして期待されています。私たちの研究グループでは、2枚の羽ばたき翼で、両翼幅18cm、機体重量20gの羽ばたき型ドローンを開発し、自律ホバリング飛行に成功しました。このドローンは、2枚の翼を1秒間に32回で羽ばたかせながら、飛行中に尻尾を細かく動かすことで、自律的に機体の姿勢バランスを保っています
図.羽ばたき型ドローン
Nagai, H., Nakamura, K., Fujita, K., Tanaka, I., Nagasaki, S., Kinjo, Y., Kuwazono, S., and Murozono, M., “Development of Tailless Two-winged Flapping Drone with Gravity Center Position Control”, Sensors and Materials, Vol. 33, No. 3 (2021), p. 859-872.
https://doi.org/10.18494/SAM.2021.3222
永井弘人, “人間と調和する生物を規範とした羽ばたき型ドローンの開発”, ながさき経済, No. 385, 2022年春号, p44-46.
https://nagasaki-keizai.jp/ngskeizai-wp/wp-content/themes/ngskeizai/actibook_data/nk_00385/HTML5/pc.html#/page/46
羽ばたき翼の最適設計
生物の羽ばたき翼は、翼の上下振動であるフラッピング運動と、翼のねじり振動であるフェザリング運動から成ります。生物は翼を高速で羽ばたかせながら、この両者の翼の運動を適切な角度とタイミングで実行することで、様々な飛行状態を実現しています。この高速で複雑な羽ばたき運動を機械的に実現するために、羽ばたき型ドローンでは翼の受動的な変形を積極的に利用しています。本研究室では、最適な翼構造とは何か?どのような羽ばたき運動が良いのか?を実験・解析を通して研究しています。
図.弾性羽ばたき翼の変形の様子
Nagai, H., Fujita, K., Murozono, M., “Experimental Study of Forewing-Hindwing Phasing in Hovering and Forward Flight,” AIAA Journal, Vol. 57, No. 9 (2019), pp. 3779-3790.
https://doi.org/10.2514/1.J058335
Minoda, T., Nagai, H., Yashiro, S., Uda, N., “Aeroelastic Effect of Corrugation for an Insect-Sized Flapping Wing,” AIAA Journal, Vol. 60, No. 5 (2022), pp. 3180-3193.
https://doi.org/10.2514/1.J061027
構造物の渦励起振動
構造物は風を受けると、その背後に周期的な渦が発生し、その渦の周波数と構造の周波数が一致すると、渦励振と呼ばれる振動が発生します。本研究室では、流体・構造連成解析によって、構造物に発生する渦励振現象の解明を行っています。下の図は、風レンズとよばれる風車の周囲に取り付けて風を集めて発電効率を高める装置に起きる渦励振現象を、数値シミュレーションで再現したものです。
図.風レンズ構造の渦励振
Kim, T., Nagai, H., Uda, N., Ohya, Y., “Fundamental Effect of Vibrational Mode on Vortex-Induced Vibration in a Brimmed Diffuser for a Wind Turbine,” International Journal of Energy for a Clean Environment, Vol. 22, No. 4 (2021), pp. 1-32.
https://doi.org/10.1615/InterJEnerCleanEnv.2021036688
フラッター発電に関する研究
フラッターとは、ある風速以上になると航空機の翼がはためき自励振動する現象です。航空機の翼ではフラッターが起きないように設計しなくてはいけませんが、本研究室では、そのフラッター現象を発電に利用するための研究を行っています。
図.フラッター発電
研究業績等は,下記のresearchmapをご覧ください。
https://researchmap.jp/nagai-hiroto