2023年度の構造工学コース長を務めます中原です.
私は,2015年に本学に教授として着任しており,構造工学コースの中で,教授在任期が最も長い教員となりました.これから始まる9年目にして,私はコース長4回目です.
コース長は,年度末の卒業式にて祝辞を述べます.下に,2016年度の私の祝辞の一部を引用します.
「人間というのは,生物界において特殊な生き物です.生存競争において,未熟であることは最も不利な条件ですが,人類は,この未熟な時間が他に比して圧倒的に長いという特徴があります.なぜでしょうか.一見不利なこの条件は,学習期間を延ばすことで後天的な変化への対応力つけるという意味があるそうです.無防備という不利を補って余りある能力とは,それは変化への対応力といえましょう.この変化への対応力は,失敗とその回復によって鍛えられるものです.人類をして,この世界の霊長たらしめているのは,なんとその未熟さなんですね.」
大事なことは,変化を受け入れることができる柔軟性です.年を経るごとに,この柔軟性は,身体だけでなく,頭脳や心からも失われてゆくように感じます.現在の皆さんは,経験や知識という意味では,大学内で最弱ですが,変化への対応力という意味では大学内で最強であるべきです.この優位性をよく理解して,なんでも積極的に取り組んでゆけるようにしてください.
受験を含むペーパーテストは,いかにミスを少なくするか,つまり,失点をいかに最小にとどめるかが,ポイントになろうかと思います.しかしながら,大学の,特に研究にかかわる部分は,むしろ失敗を恐れず挑戦し続ける姿勢のほうが,大きな結果につながるように感じています.大学での学習は,学習内容の習得に加えて,卒業後も続く,学習の継続方法の構築が重要だと思っています.私自身は,あれこれと考えて,新しい研究を企画するのを楽しいと感じます.これは,遠足前夜の少年と同じ心持だと思います.このような気持ちで,勉強なり研究なりを継続できるのであれば,おのずと結果はついてくると思います.
最後にアリストテレスが残したとされる言葉を引用して筆をおきます.
「あらゆるほんとうの仕事は、人間が真剣にそれに没頭しさえすれば、たちまち興味深くなってくるという性質をもっている。仕事の種類が幸福にするのではなくて、創造と成功の歓喜が幸福にするのである。およそありうるかぎりでの最大の不幸は、仕事のない生活であり、生涯の終わりにその実りを見ることのない生活である。」
皆さんが,実り多き大学生活を送ることを期待しています.
2023年度コース長 中原 浩之
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